高校生の中には「これから高校を卒業して大学に進学するか?それとも企業に就職するか?」で悩んでいる方もいると思います。
最終学歴が高校卒業(高卒)と大学卒業(大卒)では単純に学歴が違いますが…
「高卒と大卒では、社会に出てからどんな違いがあるのか?」がよくわからない点もありますよね。
両方とも明確に分けられない点もありますが、「高卒と大卒はここがハッキリ違う」という一目でわかる点を説明していきます。
高卒と大卒はどこに違いが出るのか?
高卒と大卒で違いが出る点は4つあります。それは、
・応募できる求人の違い
・就職先の仕事の内容
・能力
という点です。
それぞれ説明していきます。
高卒と大卒の「生涯賃金」の差
実際に高卒と大卒では、生涯賃金に違いが出ます。
「生涯賃金」とは、ひとりの労働者が生涯にわたって得る賃金の総額です。
男女とも「大学・大学院卒」の生涯賃金が一番高い
下のグラフは、2017年の「中学卒」「高校卒」「高専・短大卒」「大学・大学院卒」の生涯賃金です。
ここでは学校卒業後に正社員として働き続けた場合の60歳までの生涯賃金をグラフにしています。
(転職する場合は同じ企業規模で転職するものとする)
出典:ユースフル労働統計2019 生涯賃金など生涯に関する指標
上のグラフの「高校卒」と「大学・大学院卒」の男女の生涯賃金を比較してみましょう。
男性 | 女性 | |
大学・大学院卒 | 2億6920万円 | 2億1670万円 |
高校卒 | 2億1140万円 | 1億5020万円 |
差額 | 5,780万円 | 6,650万円 |
上の表からもわかるように高卒と大卒では生涯賃金に開きがあります。
この差は大きな額ですよね。
大卒よりも高卒のほうが4年早く社会に出てはたらくことができるのですが、それでも大卒のほうが生涯賃金が多くなります。
もちろんこれは平均の額ですので、みんなが同じ生涯賃金になるわけではありません。
高卒でも年収が高い会社に入社して出世して勤め上げれば、大卒並みの生涯賃金になる人もいます。
反対に大卒でも年収が低く、あまり昇給もしない会社に就職すれば、生涯賃金が低くなってしまいます。
高卒と大卒の初任給の差
下の表は令和元年(2019年)の高卒と大卒の初任給です。
男性 | 女性 | |
大学卒 | 212,800円 | 206,900円 |
高校卒 | 168,900円 | 164,600円 |
差額 | 43,900円 | 42,300円 |
初任給は大卒の方が高卒よりも高くなります。
男性と女性ともに、就職したときの最初の給与(初任給)で4万円ぐらいの差がついてしまいます。
ただ生涯賃金の高さは、その後の昇給の額が大きく影響してきます。
昇給は本人の実績などによって給与が上がることですね。
一般的には高卒よりも大卒の方が昇給額が大きくなります。
特に30代以降は、仕事の経験やスキルや役職などに合わせて高卒と大卒の年収の差も大きくひらいてきます。
今は学歴など関係なく仕事ができる人が出世して年収が増えるという企業も多くありますが、一般的には学歴が影響する企業も多いです。
上で紹介した生涯賃金や初任給はあくまで平均の額ですので、大卒や高卒でも人によって大きな差が出てきます。
高卒と大卒は「応募できる求人」に違いがある
就職・転職サイトやハローワークの求人を見てみると、応募条件に「高卒以上」「大卒以上」を見かけます。
それぞれの意味は、
「高卒以上」は、高校を卒業した人が応募できる求人
「大卒以上」は、大学を卒業した人が応募できる求人
となります。(高校や大学に在学中で卒業見込みの方もふくまれます)
ということは、
となります。
最終学歴が高卒の人は、「大卒以上」の求人に応募することはできないのですね。
新卒採用のやり方に違いがある
高校生の就職は、高校に来る求人に応募して採用になることが一般的です。
そのため求人の選択肢も多くなく、応募できる求人も1社だけで、不採用になったらまた次の求人に応募できるという仕組みです。
また高校に来た求人以外で探すと、正社員になることもむずかしくなります。
大学生の就職は、基本的には自分で求人を探して応募することになります。
大学にも求人は来ますが、一般的には新卒の就職サイトを利用して自分で申し込みをします。
そのため選べる求人数は限りなく多く、好きなだけ選んで応募できますが、人気企業は応募者が殺到するため簡単に内定はもらえません。
大学側も学生の就職活動のサポートはしてくれますが、就職活動の時期が来たら、自分で情報を集めて動かないと就職は決まりません。
このように、高校生と大学生の就職活動のやり方に違いがあります。
「大卒以上」の方が待遇が良い
また「高卒以上」と「大卒以上」の求人を比べると、「大卒以上」の方が待遇がいいです。
新卒の就職活動の時はそんなことは意識しませんが、転職活動の際にはそれを実感します。
転職活動で求人を見ていて、「この求人は給料も高くて休日も多くて条件がよさそう!」と思って応募条件を見ると、「大卒以上」と書かれていることが多いです。
もちろん「高卒以上」でも待遇の良い求人はあるのですが、一般的には「大卒以上」のほうが上です。
また大卒で規模の大きい企業に入社できれば、もらえる給料も高くなり、生涯賃金は大きくなります。
これは、ほかの「中学卒」「高校卒」「高専・短大卒」の学歴とは大きく差をつけて「大学・大学院卒」の生涯賃金は高いです。
そのため多くの人が多額の授業料を払って大学へ行き、「大卒以上」の資格を得て、新卒採用で大企業など規模の大きい企業に就職しようとするのです。
大企業への就職は難易度も高いですが、そこをめざすだけの価値があるのです。
高卒と大卒では「仕事の内容」が違う
高卒と大卒が同じ会社に就職しても仕事の内容が違います。
中小企業では同じ仕事を担当することもありますが、規模の大きい企業になると高卒と大卒では職務内容が分かれてきます。
そして入社後に高卒が大卒の職務内容につこうと思っても、かなりむずかしくなります。
自動車メーカー「MAZDA(マツダ)」の場合
わかりやすい業界は製造業です。
ここでは例として、自動車メーカー「MAZDA(マツダ)」の「2021年度定期採用計画」を見てみましょう。
技術系 | 大学院・大学・高専・専門・高校 | 210名 |
事務系 | 大学院・大学・短大・専門 | 35名 |
技能系 | 高校 | 260名 |
小計 (技術系+事務系+技能系) | 505名 |
上の表を見るとわかりますが、学歴によって職種が違います。
高卒は「技能系」
大卒は「技術系」「事務系」
と分かれています。
それぞれの職種の説明
それぞれの職種の仕事内容は、
「技術系」は主に、商品企画や車両開発などの業務
「事務系」は主に、経営企画や財務や人事や広報などの業務
「技能系」は主に、工場や店舗で車の製造や整備業務
このように同じ企業でも学歴によって職種が分かれています。
マツダは自動車メーカーですので、車の研究開発や製造にたずさわる「技術系」や「技能系」の採用人数が多いです。
「技術系」は大学・大学院の理系の卒業生を採用することが多く、「技能系」は工業高校から採用することが多いと思います。
マツダの場合、高卒でも「技術系」に入社できるようですね。
高卒は主に「一般職」
マツダの例を挙げましたが、高卒は主に現場での一般職で、大卒は将来の幹部候補の総合職につく場合が多いです。
高卒の一般職の仕事の範囲はそれほど広くはなく、企業が作成したマニュアルにもとづいて仕事をおこなう現場スタッフが多くなります。
工場の製造部門や現場の実務スタッフなどの「労力」を求められる仕事に就き、教えられたことを覚えて働くことが求められます。
どちらかというと「何かを作り出す、考える」というよりは、「決められたことをしっかりこなす」という仕事が多いです。
大卒は主に「総合職」
専門的な知識が必要になる仕事は、高卒よりも大卒のほうが圧倒的に多いです。
また大卒は将来の企業の経営にたずさわる幹部候補になることも多いです。
そのため研究開発・営業・経営企画・人事・広報などのいろんな仕事を経験する総合職につく方も多いです。
新しい商品やサービスを研究・企画したり、新しい契約プロジェクトをまとめたり、企業の経営方針を考えるなど「考える力」が要求されます。
「将来は企業の経営に関われるようになりたい」というのなら、大学を卒業しておいた方がいいですね。
仕事ができる人は学歴関係なく出世する
そして高卒と大卒では出世のスピードにも差が出ます。
仮に高卒と大卒が同期入社で同じ仕事をしていたとしても、数年後には大卒は昇進して肩書がつくけど、高卒は平社員のままとか。
企業の役職に就くためには大卒であることが必須で、高卒だと出世できても係長や課長までということもあるでしょう。
入社してから10年ぐらいまでは高卒と大卒の処遇に違いがあるかもしれません。
しかし、そこからは社会に出て築き上げた実績がものを言います。
いろんな仕事をまかされて結果を出せる人は、高卒や大卒などの学歴は関係なく出世できる企業もたくさんあります。
そのため高卒でも仕事ができればチャンスはあります。
大卒でも出世しない人もいる
企業の売り上げに大きく貢献したり、チームをまとめて結果を出せる力があるなど、学歴は関係なく実績をつくれる人もあらわれます。
そうした人は高卒でも取締役や役員になる人もいますし、反対に大卒でもほとんど出世しないで定年をむかえる人もいます。
特に学歴不問の企業の場合は、入社後の本人の実力次第というところもあります。
仕事ができる人は企業にとって役立つ人間のため、昇給し出世していきますが、仕事ができない人は一流の大学出身者でも出世できずリストラの対象になることもあります。
高卒と大卒の違いはありますが、学校を卒業して社会に出てしまえば学歴よりも、その人の実力次第という面もあるのです。
就職してからは学歴などにこだわらないで、仕事で成果を出せるようにしたいですね。
高卒と大卒は能力に違いが出る
また高卒と大卒の違う点として、大卒は、
・大学で視野が広がる
という点です。
大学で専門的な知識を学んでいる
大学を卒業した人は、高校生の時に勉強して大学入試試験に合格していますので、「知識を吸収する」ことに長けています。
そのため社会に出て仕事を覚える要領やコツもよくわかっているので、仕事を覚えるのがはやいです。
また大学でそれぞれ専門的な知識を学びます。
それによって「与えられた問題を解く能力」や「自分で課題を見つけて情報を集めて分析したり、問題を解決する能力」がみがかれていきます。
こうした能力は仕事をしていく上で必要になりますし、その能力が高く、結果を出せる人は企業内でも重宝されて出世していきます。
もちろん大卒でも能力の高い人や低い人がいますし、高卒でも能力が高い人はたくさんいます。
しかし大学に入ってしっかり勉強することによって、物事に対する理解力や洞察力や分析力がやしなわれます。
大学の学問を通して自分の頭で考えることが多くなり、思考回路が広がり知識量も増えて、社会に出てからの適応力も上がります。
そのため社会に出たときは、高卒よりも大卒のほうが能力が上とみなされ、会社の中枢で働く人も大卒の方が多いです。
一般的にはそのような感じで見られています。
そのために学歴がひとつの判断材料になるのですね。
大学で視野が広がる
高校の時と比べて、大学の時の方が考え方や視野が広がります。
高校生の時は、ほぼ同じ年代の同じ地域の人との交流にかぎられますが、大学になるとその規模がさらに大きくなります。
いろんな地域から人が集まりますので、そうした人たちからいろんな刺激を受けるようになります。
例えば、
「自分ではかなわないと思うほど、とてつもなく頭がいい人がいた」とか、
「自分は変な性格だと思っていたけど、自分よりも変な性格の人がたくさんいた」とか、
「カルチャーショックを受けるほど、見た目や考え方が違う人がいた」
など、いろんな人と出会えます。
18~20代前半の多感な時は、新しいものや変わったものに興味を持ったり、時には大きな影響を受けることもあります。
そうした人と接することで物事の考え方が柔軟になり、価値観が広がり、人間関係のつくり方や社会に対する見方が大きく変わっていきます。
他人を見本にしたり自分と比較しながらも、自分の将来設計をどうするのか深く考えるようになります。
大学時代はそれを考える時間もあります。
「大学で学んだことが、実社会で役立つことは少ない」と言われます。
しかし大学で学んだ学問だけが重要なのではなく、そこで培われた教養や考え方が社会に出てからも役に立ちます。
自分でいろんなことに好奇心を持って行動するなど積極性がないと、せっかく大学へ行っても、ただ毎日退屈に過ごすだけで卒業をむかえてしまう人もいます。
人によって過ごし方は様々ですが、大学は大きく視野を広める意味で重要な場になります。
まとめ
高卒と大卒で違う4つの点として、
・応募できる求人の違い
・就職先の仕事の内容
・能力
を紹介してきました。
2019年の調査では、大学進学率は53.7%で過去最高となり、そのうち女子学生の割合も過去最高の45.4%となりました。
高校生の2人のうち1人は進学する時代です。
ここまで高卒と大卒の違いを説明してきましたが、「高卒と大卒はどちらがいいのか?」と聞かれると、一概にどちらがいいとは言えません。
高卒で就職するか、それとも大卒で就職するかは、大きな分かれ道になります。
これは悩むところですが、長い目で見れば、社会に出て結果を出せる人は、どちらを選んでも結果は出せるものです。
「大卒」の資格や「大学で学んだもの」がなくても、今後の人生で明確な目標をもって自分を磨き続ければ、学歴など関係なくどの分野でも成功できます。
大学に進学するかどうか迷っている方は、参考にしてください。
コメント