大学在学中の就職活動がうまくいかなくて、内定がひとつもないまま卒業をむかえそうなとき。
「大学を卒業してから就職活動を続けるか?」
「留年して大学に籍を置いたまま就職活動を続けるか?」
で迷う方もいますよね。
就活を続ける時にはこの2つの選択肢がありますが、ここでは「就職留年」と「就職浪人」の違いと、
「どちらを選んだら今後の就活で有利になるのか?」などを説明していきます。
「就職留年」と「就職浪人」の違い
この2つは会社に就職することを目的としていますが、基本的に違うものです。
「就職留年」→大学を卒業せず大学に籍を置いたまま就職活動をすること
4年制の大学であれば4年で卒業せず、留年して5年以上大学に籍を置き、「大学生」として就職活動をすること。
「就職浪人」→大学を卒業して就職活動をすること
この場合は「既卒(きそつ)」とも言います。
今は大学卒業後の3年以内は、既卒者も新卒採用にエントリーできるように国が企業に通達しています。
大学卒業後も在学中と同じように新卒採用の選考を受けることができるのですね。
ただ既卒者はもう大学生ではないので、仕事をしていなければ「無職」、アルバイトをしていれば「フリーター」になります。
このような違いがあります。
就職留年するとどうなる?
「就職留年」とは、大学を留年することです。
この際のメリットとデメリットを挙げてみましょう。
メリット
・学生なので学割が使える
・大学の就職課やキャリアセンターなどを利用できる
・履歴書に空白期間ができない
デメリット
・留年した理由を質問をされる
などがあります。
「大学生」として就職活動ができる
大学生として大学に在籍して就職活動ができる点はかなりメリットがあります。
留年で多少劣化したとしても「新卒カード」が使えることは大きいのですね。
大学を卒業して既卒になっても新卒採用の求人に応募はできるのですが、すべての企業にエントリーできるわけではありません。
既卒者になると応募できる企業に限られてしまいます。
そうなると在学中の時よりもエントリーできる企業数が少なくなり、それが影響して、内定をもらえる確率も減ってしまいます。
在学中であれば、とりあえずエントリーできる企業数は多くなります。
さらに在学中であれば大学の就職課やキャリアセンターなどを利用して相談に乗ってもらうこともできます。
また、学生の身分のため、学割で交通費が安くなるなどの利点もあります。
学生でいることの利点はあるのです。
就職留年すると余計に学費がかかる
留年したときの大きなデメリットは「よけいに学費がかかる」という点です。
こちらは大学の1年間の学費です。
1年間の学費 | |
国立大学 | 535,800円 |
公立大学 | 538,294円 |
私立文系 | 933,499円 |
私立理系 | 1,290,654円 |
私立医歯系 | 3,749,311円 |
出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」「平成30年度私立大学等入学者に係る初年度学生納付金平均額」
上の表から、1年間の学費を大雑把に言うと、
私立文系は約93万円
私立理系は約130万円
私立医歯系は約375万円
を大学に支払わないといけません。
けっこうな額ですよね。
ただ支払う学費は、大学でそれぞれ違いますのでよく確認してください。
大学によっては単位を全部取得するなどの卒業資格を満たしていても、本人が「大学に残りたい」と申し出れば留年できる学校もあります。
反対に卒業資格を満たしていれば、留年など許さず強制的に卒業になることもあります。
その場合に留年したいときには、卒業単位をギリギリで満たさないなどの工夫も必要になってきます。
その辺も確認しておきましょう。
また留年が決まった時には休学を申し出て授業料を安くするという方法もあります。
例えば1年のうち前期だけ休学して就活を続けて、後期だけ授業料を支払い大学に出て卒業するということもできるようです。
これも大学によって違いますので就職課やキャリアセンターに相談してみてください。
できれば留年などしない方がいい
ここまで説明してきましたが、実際には留年はおすすめしません。
国公立大学でも授業料は53万円もかかりますし、私立大学になるとその倍以上のお金がかかります。
さらに大学を卒業して会社ではたらきはじめた同級生は、給料をもらっています。
大学の同級生とは、留年した分の差がついてしまうのですね。
今は大手企業に就職した大卒の入社1年目の年収は約276万円といわれています。
ということは、仮に国公立大学を留年して1年間会社で働けないとなると、学費の出費に加えて1年目の年収も入ってきません。
そうなると、
53(学費)+276(年収)=329
合計で329万円のマイナスを出すことになります。
私立文系だと、93(学費)+276(年収)=369
合計で369万円のマイナスとなるのですね。
留年せずに大学を卒業して就職していれば、この分のお金が自分のふところにあったわけです。
もったいないですよね。
そして大学の学費は親に支払ってもらう方も多いと思いますが、「留年したからもう1年分の学費はらってくれない?」とはなかなか言いづらいと思います。
親に怒られることを覚悟で学費の支払いを頼まないといけなくなりますので、留年はなるべくならさけたいところです。
「なぜ留年したの?」に対する答えは考えておく
また留年したときの就活では企業の面接官から「なぜ留年したの?」ということは聞かれます。
その答えはしっかり答えられるようにしておきたいですね。
留年した理由として「病気やケガ」「家族の介護」などの理由は特に悪い印象にはならないですが、
「部活やバイトに専念しすぎた」
「勉強についていけなかった」
「学校にあまり行っていなかった」
などは、とらえ方によってはマイナスの印象を持たれてしまいます。
説明の仕方もよく考えておきましょう。
ただ面接で嘘をつこうと思っても面接官もその辺は経験上、よく心得ています。
どんなに立派な理由でも見抜かれてしまうこともあります。
留年した理由はなるべく正直に伝えましょう。
企業によっては留年した理由を鋭く突っ込んでくることもあります。
それでボロが出てしまい不採用になることもありますので、しっかり対応できるようにしておきたいですね。
また留年したことが不利になるかどうかは企業によって違います。
留年した理由にもよりますが、1年ぐらいの留年ならそれほど気にしない企業も多いと思います。
中には学歴の欄をよく見ないため、留年したことに気づかないのか「留年した理由」を聞いてこない企業もあります。
それでも翌年の就職を見すえて留年しても、それで状況が良くなるわけではありません。
留年して就活するのであれば、その準備をしっかりしないと、また同じ結果になってしまう可能性もあります。
その辺はよく考えて就活にのぞみたいですね。
就職浪人になるとどうなる?
就職浪人とは大学を卒業してから就職活動をおこなう人のことを言います。
既卒とも言いますよね。
ここでは就職留年と比べたときのメリットやデメリットを挙げていきましょう。
メリット
・大学に学費を納める必要がない
デメリット
・大学の就職課や学割などが使えなくなる
・「なぜ在学中に就職が決まらなかったのか?」と質問される
などがあります。
就職浪人は就活のために時間を有効に使える
就職浪人は大学を卒業しますので、もう大学に通う必要はありません。
そのため留年する場合と比べて就職活動に時間を使えるようになります。
そして大学に学費を支払うこともないので、お金や時間を有効に使えるようになります。
時間があるためアルバイトを始める方もいるでしょう。
大学によっては卒業後も就職課やキャリアセンターを利用できる場合もありますので相談してみてください。
大学の施設を利用できなくても、就活に関する相談は「新卒応援ハローワーク」や「ジョブカフェ」でも受け付けています。
新卒採用の求人も閲覧できますので、そちらも利用してみてください。
ただもう学生ではないので、学割が使えなくなって交通費の負担が大きくなったり。
大学卒業後は就活する仲間がいなくなり、ひとりで不安になることもあると思います。
反対に在学中と違い、ほかの就活生の動向を気にすることなく、自分のペースで就活を進めることができるという点も良いところかもしれません。
既卒者が応募できる求人が少なくなる
国(厚生労働省)は、学校卒業後3年以内の既卒者が新卒枠に応募できるように企業に通達しています。
そのため大学卒業後の既卒者も応募できる新卒採用の求人はあります。
ただこれは国から企業への強制ではないので、既卒者がすべての企業の新卒枠に応募できるわけではありません。
企業によっては「既卒者は応募できません」とか「既卒1~2年の方のみ応募可」など、応募制限をもうけているところもあります。
そのために在学中の時と比べて既卒者の就活は厳しくなります。
既卒者の内定率
下の図は2019年の「現役学生」と「既卒者」の内定率です。
2019年度 マイナビ既卒者の就職活動に関する調査
3月に就職活動が始まり、8月の時点で「現役学生」の82.6%が内定をもらっています。
それに対して「既卒者」は43.3%しか内定が決まっていません。
これを見ると、やはり既卒者の就活は厳しいものがわかります。
既卒者は企業を探すのに苦労する
また「既卒者を受け付けている企業を探すのに苦労した事はありますか?」という質問は、
既卒者の58.8%が「はい(苦労した)」と答えています。
就職サイトでは「既卒」で検索して、その中でヒットした求人に応募するなどしたほうがいいですね。
既卒者の就職活動の感想
ここからは既卒者の就職活動の感想を見ていきましょう。
既卒者の応募先の選び方
下の図は「在学中と既卒のエントリー先、応募先の選び方の変化」についてです。
上の図の回答が多い順に並べると、
「既卒者を受け付けている企業を選ぶようになった」55.8%
「在学中より業界の幅を広げた」52.8%
「在学中より職種の幅を広げた」26.4%
「身の丈にあうと思う企業を選択するようになった」19.6%
「企業情報を収集する手段を増やすようになった」19.3%
「在学中より中堅中小企業中心に活動するようになった」19.2%
「在学中より勤務地を絞り込んだ」13.7%
「在学中より勤務地の幅を広げた」12.1%
「在学中より業界を絞り込んだ」12.1%
「在学中より職種を絞り込んだ」10.7%
「在学中より大手企業中心に活動するようになった」2.9%
「その他」3.2%
となります。
既卒になったら在学中の就活とはやり方を変えていくことも考えてみましょう。
卒業後の就職活動において大変だと思うこと
下の図は「卒業後の就職活動において大変だと思うことは何ですか?」という質問に対する回答です。
上の図の全体の回答で多い順に並べると、
「既卒として就職活動をしている理由を聞かれる」49.9%
「既卒者としての活動の仕方がわからなかった」46.1%
「既卒者の募集が少ない」45.0%
「既卒者募集をしている企業が探しづらい」40.1%
「新卒のように仲間がいないので進捗がわからない」32.9%
「現役学生と一緒の選考は、気おくれする」25.2%
「大学のキャリアセンターを利用しづらくなった」23.2%
「在学中に就職活動をしなかった理由を聞かれる」22.5%
「就活スケジュールの流れに乗り遅れ、セミナーや説明会に参加できなかった」17.6%
「自分で面接対策やエントリーシート対策ができるところを探して練習した」12.9%
「その他」10.3%
「就労中の職場に迷惑がかからないように気を遣う」9.4%
「就労中の職場に気づかれないようにする」3.9%
卒業後も就職活動を続けている理由
下の図は「卒業後も就職活動を続けている理由」です。
上の図の全体の回答で多い順に並べると、
「活動し続けたが内定をもらえなかった」27.8%
「公務員志望だったが受からなかった」23.6%
「勉強や研究・実習が忙しくて就職活動ができなかった」17.1%
「身体的・精神的に不調をきたし、途中で活動出来なくなった」10.5%
「就職活動に対する自信を無くし、途中で活動を終えてしまった」8.7%
「その他」5.6%
「行きたい企業が見当たらなくなり、途中で活動を終えてしまった」3.1%
「志望業界にこだわりがあり、卒業後に再挑戦するため」1.3%
「家庭に事情により」1.3%
「海外留学や進学志望だったが上手くいかなかった」0.9%
上の図にはないですが「内定を辞退して就職活動を続けている」などの理由もあります。
質問には正直に答える
既卒の就活では必ずといっていいほど企業の面接官に、「なぜ在学中に就職先が決まらなかったのか?」という質問がされます。
「なぜ在学中に就職先が決まらなかったのか?」という質問に対して、いろいろと理由はありますが、基本的には正直に答えましょう。
これは私の個人的な意見ですが、企業の面接官は大学を卒業した人に完璧さなど求めていません。
就活がうまくいかずに内定なしのまま卒業することだってあります。
大事なのは変にとりつくろわずに、失敗した点も含めて説明することです。
説明の仕方としては「在学中の就活がうまくいかなかった理由」や「自分の至らなかった点」や、
「卒業後に考え方を改めた点や既卒になってから行動したこと」「自分の将来をどう考えているのか?」などをまとめておきましょう。
過去のことは変えられませんので、そのことは正直に話しておきましょう。
そのあとに「うまくいかなかった後にどう考えてどう行動したか?」という点を付け加えて説明することで面接官も注目すると思います。
失敗することは誰にでもあります。
大事なのは正直さと失敗した後のことです。
そのことをうまく説明するように心がけてみてください。
「就職留年」と「就職浪人」はどちらがおすすめ?
ここまで「就職留年」と「就職浪人」の違いを説明してきましたが、
就職活動に関してどちらが有利かというと……「就職留年」の方です。
やはり大学生でいた方がエントリーできる企業数も多くなりますし、その分だけ内定がもらえる確率も高くなります。
留年する学費分は高くつきますが、それは会社に就職してから取り返せばいいのです。
また留年して就活する場合には、自分の親だけでなく大学の就職課やキャリアセンターの職員とよく相談してから決めるようにしましょう。
ただ在学中に就活をしたけど内定ゼロだった場合には、自分の就活のやり方をもう一度見直してみましょう。
原因をよく探さないと、留年した次の年も同じ結果になってしまうこともありますので気をつけてくださいね。
「就職浪人」も悪いわけではありません。
在学中の時と比べて既卒の就活はハンデがありますが、それでも就職できないわけではありません。
既卒でも人によってはいくつかの企業から内定をもらえますし、粘り強くあきらめずに頑張れば必ず良い結果が出ます。
既卒だからとあまり負い目を感じないことが大事だと思います。
以上になりますが、就職活動の際の参考にしてください。
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